エネルギーの単位について

現代は国際化社会です。
単位は世界共通のものを使用すべきです。
国際単位系(SI単位系)というものが定められ、科学の世界に限らず経済等でもSI単位の使用が求められています。
SI単位はメートル法を拡張したもので、1954年の国際度量衡総会で採択されたものです。
国内では計量法という法律があって、SI単位に基づいています。
たとえば、以前大気圧についてミリバールというものが用いられていました。
しかし、現在では計量法がバールという単位を認めていないため、SI単位であるパスカルに100を意味する接頭語をつけたヘクトパスカルが用いられています。

エネルギーについてはジュール(J)がSI単位であり、カロリーはSI単位ではありません。
現在の日本の計量法では栄養学や生物学に関する事項の計量以外でのカロリーの使用が禁止されています。
従って、現在の高校教科書では、熱量や仕事の単位は全てジュールで、カロリーの表記はありません。

しかし、化学にとっては、1.0ミリリットルの純水を1℃上昇させるのに必要なエネルギーが1 calと、こちらの方が判りやすい点も多く、アメリカ現在でもカロリーが用いられている有機化学、生化学の教科書が多いようです。当然その訳書はカロリーが単位として用いられています。物理化学の教科書はアメリカでも30年以上前からジュールが用いられています。
計算機化学では、現在でもカロリーとジュールが混在しています。決して生命現象のエネルギーの出入りを議論しているわけではありませんが、カロリーを使用している比率の方が高いように感じます。
試験管、フラスコを主な実験道具にしている化学屋にとっては、カロリーの方が判りやすいかもしれません。

このような背景から、ここでは単位としてカロリーを用いることとします。
論文を投稿する場合、海外の雑誌ならカロリーの使用は問題になることは少なそうですが、国内の雑誌の場合、計量法という法律上、ジュールに直さなければアクセプトされないと考える必要があります。

よく似たこととして、気体定数が挙げられます。1018ヘクトパスカルというより、1気圧といった方が判りやすいせいか、気体定数に0.0821 (L atm mol-1 K-1)の方が、 8.31 (J mol-1 K-1) より親しみやすいという化学屋さんの方が多いかもしれません。
しかし、いずれSI単位に統一されていくと思います。またそうなるべきです。